誰もが60代を過ぎる年代になると、「そろそろ住み替えた方がいいのだろうか」と考え始めますが、なかなか決断できないのが現実です。

「自宅はどう処分するの?」決断できない男たち

特に決断できないのは、圧倒的に男性の方。女性は自宅を離れることをためらわない方が多いと思います。女性は頭の切り替えができるからでしょう。

自宅から動きたくない理由としては「荷物の整理が大変」「自宅はどう処分すればいいのか分からない」といった問題もあります。

今回は、ギリギリまで自宅に住み続けた方で、のちに後悔してしまわれたケースをご紹介しましょう。

退院は決ったけど、医師「自宅に戻るのは難しい」(都内在住 89歳女性)

都内の戸建てで一人暮らしの女性Nさん(89歳)は自宅で転倒し、大腿骨を骨折する大けがを負ってしまいました。

リハビリを終えた5ヵ月後、ようやく退院できるというとき、主治医からこう告げられたといいます。

「今の身体の状況では、自宅に戻って一人で生活を続けるのは難しいですね」

そこで、Nさんの住み替え先を子どもたちが大急ぎで探すことになりました。

▼全文は、次の2本の記事に収録しています。
・第20話 退院の日決るも医師「自宅に戻り一人暮しは難しいですね」
・第21話 生活費は月20万、予算に見合う施設は本当に空いてない?!

足腰が弱くなっても「自宅は離れたくない!」(埼玉県在住 87歳女性)

Mさんのお母さま(87歳)は、埼玉県秩父市の戸建てで一人暮らし。足腰が弱くなり、おふろ掃除や庭の管理もつらくなる一方でした。

そこで、市役所に出向いて相談し、要介護認定を受けた結果、“要支援1”の判定。さっそく、介護保険を利用してヘルパーさんに週1~2回来ていただき、家事などのお手伝いをお願いしたのです。

このときお母さまが一番望んでいたのは、「住み慣れた秩父を離れたくない」ということでした。

一方、娘のMさんは家庭をもっています。

「母の介護度がもっと進んでしまい、何かあったとき、すぐに秩父まで駆けつけるのはとても大変です。できれば私の家の近くで暮らしてほしいと思います」

そこで、Mさんの住む横浜市への転居を考え、市内のさまざまな“高齢者向け賃貸住宅”を見学することになったのです。

▼全文は、次の2本の記事に収録しています。
・第18話  途方に暮れる子世代、介護が必要な親の住まいはどうする?
・第19話 iPadとWebカメラ購入、それでも自宅に住み続けるワケ

子のいない方や単身女性はなぜ早めに住替える?

本コラムでは「今は高齢者向けのさまざまな住宅や施設があるため、ご自身に合った住み替え先が選べます」とお伝えしてきました。そして、もう一つ重要なテーマがあります。「住み替えのタイミング」のことです。

一般的にご高齢者は、70代半ばくらいから真剣に住み替えを考え始める方が多く見受けられますが、大別すると次の2つのパターンに分けることができるでしょう。

高齢期の住み替えのパターン
  • 60~70代で早めに高齢者住宅(自立者向け)へ住み替える。
  • 自宅でギリギリまで住み続けた後、介護施設等へ入居する。

この2つのパターンはどちらが正解なのかと尋ねられたら、私たちは「どちらも正解です」とお答えしています。

なぜなら、住まいを選択するということは一人ひとりが“生き方”や“ライフスタイル”そのものを選択すること。決してあとで後悔していただきたくないと思うからです。

では、この2つのうち前者の「60~70代で早めに高齢者住宅(自立者向け)へ住み替えるパターン」を詳しく見ていきましょう。

▼全文は、次の2本の記事に収録しています。
・第22話  早めに住み替えている60~70代はどんな住まいを選ぶの?
・第23話  子どものいない方や単身女性は、なぜ早めに住み替える?