このレポートは、2023年3月30日~4月2日まで東京ビックサイトで行われた「第12回インターペット~人とペットの豊かな暮らしフェア~」によるものです。

拡大するペット関連ビジネスにおいて様々な業界からの参入も激化、アフターコロナは業界をどのように変化させるのだろうか?在宅ワークの浸透とワークライフバランスの中、にわかに脚光をあびてきたペットビジネス。しかし単なる癒しを求めたビジネスでいいのだろうか?実は動物と一緒に暮らすことにはもっと深い効果があるという事を知るきっかけとなった講演があった。

下記に今回のフェアにおける特別講演講師である国立環境研究所主任研究員谷口優氏の講演内容に加え自分のペット共生知見を合わせた形にて報告をする。

〈参考〉
特別講演会 「動物が人にもたらす健康効果」
講師:国立環境研究所 主任研究員 谷口 優 氏
第12回 インターペットフェア 2023年3月30日  
東京ビックサイトにて開催

フレイルへの早期介入と健康回復

「フレイル」とは何か?(谷口講師より)

フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」のこと。厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」とされる。つまり健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味し、多くの人は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられている。

フレイルは、早く介入して対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性があることが分かっている。なお高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険がある。フレイルの基準やフレイル状態になるとどのようなことが起きるかについては下記を参照願いたい。なおフレイルの基準には、さまざまなものが存在するが下記のものが採用されていることが多い。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断される。

  1. 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
  2. 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
  3. 歩行速度の低下
  4. 握力の低下
  5. 身体活動量の低下

また、厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」とも記されており、つまり健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味している

多くの方は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられているが、高齢者においては特にフレイルが発症しやすいことが判明している。高齢者が増えている現代社会において、フレイルに早く気付き正しく介入(治療や予防)することが大切で、そうすることでフレイルから元の健常な状態に戻る可能性があることも分かっている。

参考:東京大学高齢社会総合研究機構 フレイル

上記の健康寿命と生物学的寿命(平均寿命)のギャップが社会保険制度の歪みとなっている。いかにしてこのギャップをなくしていくかは、様々な方策が必要である。

フレイルへの適切な介入と犬の関連性

ドイツの実例から言えることは、まず高齢に至るまでに或ることをしているとフレイルになりにくいという事である。第一に高齢に至るまでに犬を飼っている、または飼ったことがある人は介護保険認定となる時期が遅いことが立証されているのである。つまり犬を飼うことにより定期的な運動(散歩)が行われフレイル突入の防止に繋がっているのである。さらには犬とのコミュニケーションで愛情ホルモン(オキシトシン)等の分泌も増加し、それによる心理面による健康維持もなされ、全く犬を飼ってない人と比較して利用する介護サービス費用は約50%低い状態であるとのことである。さらに前期高齢における死亡率も大きく減少しているのである。

さらにドイツでは介護サービス費用のみならず高齢者への医療費も犬との共生者に関しては、それ以外の人と比較して年額で8%程度低いとの結果が出ている。すなわち高齢者のペット飼育による健康改善結果はドイツにおいて明白に表れているのである。

我が国の現状とSDGs

日本においては昨年度の介護保険による介護費用支払総額は10兆7700億円、さらに高齢者の医療費増により国民総医療費は44兆円に達している。しかし一方で労働人口の減少により将来個々の社会保険料負担増は避けられない状況である。したがって早急に個々の健康増進策を推進し、まずはフレイルにならないようにする早期介入策が必要となる。

これは、まさにSDGsの3.「すべての人に健康と福祉を (英: Good Health and Well-Being)」における「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」というテーマに大きく関連することであり社会としてもペット共生化推進は検討するに値する方策の一つであると考える。

国民総医療費は留まるところを知らない(出典:NHK報道より)

共生化推進と社会保険制度

現在、日本においては65歳を越えた高齢者は、ペットのみが残されてしまう事態を避けるためにペットを飼わないように促す基調が常識的となっている。しかし社会全体の仕組みとして体制を考えるなら、高齢者ほどフレイルに陥る前の比較的元気なうちにペット(特に犬)との共生を薦めるような発想の転換もあり得るのではないだろうか?

ちなみにドイツや欧州の国々の中には高齢者への犬との共生化推進策としてのインセンティブで犬との共生にかかわる費用(飼育費用)の公費からの支援や、民間の保険会社による犬との共生をすでにしている被保険者への医療保険、介護費用保険、生命保険等の保険料割引の検討もしくは一部にはすでに開始されているという事である。

保険の損害率計算を構成する「1事故あたりの支払金額」と「事故頻度率」の数値双方が犬との共生により改善されるのであるから保険料割引は当然のことである。さらに医療保険や介護保険等の社会保険制度においてこの共生が大きなロスプリベンション策になることも確実である。

健全な社会保険制度維持のためにも高齢者によるペット共生を見直すべき時期に来ているのではないだろうか?

日本では岸田内閣が少子化改善対策を税金投入による還付金で推し図るようであるが根本的な社会の仕組みを見直さない限り成果は期待できそうもない。さらに懸念される人口高齢化による社会保険制度の破綻危険も、具体的な解決策は見出せていない。

約2万年の歴史と言われる人と犬の共生の歴史がひょっとすると今、行き詰まりつつある社会保険制度改善のヒントの一つとなるかもしれないのである。

そのためには、わたしたちは新たなペット共生のスタイルを構築すべきではないだろうか?今こそ動物と人が一緒に安心して安全に暮らせる住宅、施設や制度を整備して社会福祉の観点からもペット共生を再認識してはどうだろうか?

単なるビジネスにとどめず真剣に共生社会をつくる必要があると改めて認識させられるのである。

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