日本で増加するペット飼育ニーズと背景

近年、日本では新規飼育頭数が増加傾向にあります。一般社団法人ペットフード協会が発表した「全国犬猫飼育実態調査2020」の結果によれば、2020年と2021年において新たに飼い始めた犬や猫の数はともに増加していることが示されています。これは、新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が増えたことが大きな要因として挙げられます。

自宅での時間が増える中、ペットとの生活に癒しを求める方や、ペットを通じて家族間のコミュニケーションを深めようとする方が増えているのです。特に、ペットが持つ感情的な支えや、家族との絆を深める存在としての価値は、今後も高まっていくことが予想されます。

出典:一般社団法人 住宅改良開発公社「賃貸住宅市場の動向と将来予報(展望)調査

ペット飼育の障壁と集合住宅における現状

一方で、ペットを飼いたくても事情により飼えない人々もたくさんいます。ペットフード協会の「令和2年度全国犬猫飼育実態調査」では、ペットを飼えない理由の中で「集合住宅に住んでいて飼育が禁止されている」が最も多いという結果が出ています。多くの集合賃貸住宅では、壁や床に傷がつくことを理由にペットの飼育が禁止されているため、ペットを飼いたくても諦めざるを得ない状況が続いているのです。

こうした状況は、オーナーにとっても一つの課題です。ペットを飼えない入居者は、需要があるにも関わらず物件に申し込むことができず、その結果として空室率が高まる可能性があります。

出典:LIFULL HOMES「ペット相談可物件」割合の月別推移

ペット可物件の市場動向と今後の可能性

一般社団法人住宅改良開発公社の「賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査」によると、賃貸住宅オーナーと入居者の双方が「ペット可賃貸住宅」への関心を示しています。現在、ペット飼育が可能な物件が少ないため、飼育を希望する人々が多くいるものの、飼えない現状があります。こうしたニーズの増加に対し、今後もペット可物件の需要と供給は伸びると見込まれます。

ペット可物件への需要が世帯構成の変化をもたらす

近年の核家族化と大家族の減少に伴い、世帯構成が変化し、住宅需要もそれに合わせて変わりつつあります。住宅全体に占める一戸建て世帯の割合が過去15年間で5.1%減少している一方、マンション世帯の割合は9.0%増加しています。マンションの需要増加は、耐震構造が問題視される木造共同住宅の需要減少が一因とされています。

このような中、賃貸物件の多くを占めるマンションや共同住宅には、依然としてペット不可の物件が多く、ペット飼育希望者にとって限られた選択肢しかありません。この現状は、ペット飼育者世帯の「持家・一戸建て」の割合が18.0%であるのに対し、「賃貸・共同住宅」での割合が15.7%と、少ないことからも裏付けられています。このため、賃貸共同住宅におけるペット可物件の需要は今後さらに増加すると考えられ、オーナーにとって収益拡大のチャンスとなり得るのです。

競争力を高めるための「ペット可物件」の必要性

特に、東京23区内のペット可賃貸住宅は全物件の約12%に過ぎません。これはペット飼育希望者に対して十分な供給が行われていないことを示しており、オーナーにとってペット可物件の提供が差別化戦略として有効であることを意味しています。ペット飼育世帯向けの共同住宅や賃貸住宅を増やすことで、供給ギャップを埋めつつ、競争力を持つ物件を提供することが可能です。

付加価値のある住宅の提供

税制改正により、今後は節税目的の賃貸住宅が増加すると見込まれていますが、総世帯数は2019年をピークに減少する見通しです(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」)。これにより、長期的には賃貸住宅の供給過多が進み、物件の競争が激化すると考えられます。今後は、付加価値のある物件を提供することがますます重要になります。

このような背景から、ペット飼育世帯向けの住宅を提供することは他物件との差別化につながり、入居者の獲得や収益性の向上に寄与するでしょう。オーナーとしても今後の賃貸市場において、付加価値を持たせた「ペット可物件」を戦略的に取り入れることで、安定的な収益を確保しやすくなるのです。

まとめ~ペット可物件の導入が賃貸経営の差別化戦略に

ペット可物件は、賃貸市場においてますます注目を集める分野です。賃貸物件の供給過多が予測される中、ペット可物件を導入することで他物件との差別化を図り、安定した賃貸経営を実現することができるでしょう。住宅市場の変化に柔軟に対応し、ペット可物件の導入を積極的に検討することは、オーナーとしての戦略的な一歩となります。

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