前回に続き、ペット保険についてのお届けします。
ペット保険への加入率
ペット大国であるスウェーデンでは加入率は50%、動物愛護意識の高いイギリスでは25%の加入率となります。一方日本の加入率は16.4%と、スウェーデン・イギリスと比較するとかなり低いことが分かります。
他の国と比べると、歴史自体が浅い日本ですが、なぜこれほどまで加入率に差があるのでしょうか?
日本での加入率の低さの原因としては、ペットを家族の一員として扱う意識の低さや、2005年以前の法改正前の悪質なペット保険業者によるイメージダウンなど、様々な原因があるようです。
日本ではまだまだ加入率の低いペット保険ですが、ペットの医療は日々進歩し、治療費も高額となる場合が多くなってきています。
ペットが万一大きな事故や病気になってしまったときに、お金が原因でしっかりとした治療を受けさせてあげることができない可能性も出てきます。このようなことにならないように、ペット保険への加入は必要となるのです。
日本のペット保険がこれから拡大する理由
日本のペット保険はこれからも拡大していくでしょう。そう考える理由として3つ挙げられます。
- 近年の市場成長率
- 他国の加入率
- ペットの長寿化
ペット保険市場は年々拡大しており、民間調査によると毎年の成長率は2割近いと言われています。
国内のペット保険分野にて、70%以上のシェアを持つとされる2社(アニコム社、アイペット社)の他にも、各保険会社・保険代理店をはじめとした他業種での保険商品販売も行われています。国内には現在15社ものペット保険会社があり、競争が激しくなってきています。
イギリスと日本は文化や考え方など、似ている点が多いと言われています。そんなイギリスのペット保険加入率は30%です。日本もそこまで加入率が伸びる可能性は十分に考えられます。
日本の犬や猫の寿命は近年伸び続けています。一般社団法人ペットフード教会が2020年に実施した「全国犬猫飼育実態調査」によると、現在犬の平均寿命は14.5歳、猫は15.5歳です。たった10年間で犬は0.5年以上、猫に関してはなんと1年以上伸びているのです。その理由として、
- ペットの飼育に関する正しい知識が広まった
- 医療技術の高度化
- ペットフードの品質向上
などが挙げられます。ペットの寿命が伸びる分、ペットにかかる治療費も今後増大していき、今後ますますペット保険への需要が高まると考えられます。
世界のペット保険の加入率はどれくらい?
世界規模でペット保険のニーズを見たとき、日本よりも突出して加入率が高い国がいくつかあります。それが、ペット先進国と呼ばれるイギリス・スウェーデンなどヨーロッパの国々です。
国別でみていくと、イギリスでは平均で30%程度の加入率があり、スウェーデンにおいては何と70%以上と驚異の加入率を誇ります。スウェーデンではペットは人間と同様の生活を送ることが前提で、飼育環境や購入方法についても様々な制約があります。
そのため飼い主さんたちはとても責任感が強く、ペット保険に入ることはごく普通のことなのです。またドイツでは、ペット保険といってもペットが原因で起こるトラブルを解決するための賠償責任保険に入るのが一般的とされています。国によって考え方は違いますが、ペット保険がペットを飼育するうえで大事なものだという認識は高まっているようです。
淘汰されるペット保険業界
第一生命ホールディングス(HD)は7日、ペット保険を手掛ける大手のアイペットHDを買収すると発表しました。TOB(株式公開買い付け)で全株式を取得し、来年4月上旬までに完全子会社とする。買収額の上限は約390億円。犬や猫などの長寿化や医療技術の高度化を背景にペットの医療費も伸びており、高い成長が見込めると判断したようです。
なお、アイペットはTOBに賛同しており、第一生命はアイペットHDの55.87%の株式を保有する投資ファンド、ドリームインキュベーターなどから390億円を投じて全株を取得し、完全子会社化します。
アイペット損害保険会社は2019年10月より第一生命をペット保険の販売代理店として代理店委託契約を締結していました。第一生命営業職員は第一生命が提供する各種生命保険商品に加え、ペットの通院や入院・手術を補償し、病気やケガを広くカバーする当社のペット保険商品を、第一生命生涯設計デザイナーを通じ、対面にて直接ご相談、お申込みを受けることが可能とします。
また、申込みには、第一生命が導入する次世代インフラを搭載するタブレット端末を活用することで、第一生命の商品ラインナップを含めペット保険まで一括で最適な商品提案を実現し、お客様への利便性が向上をはかっていました。
日本におけるペット保険の伸びしろと海外との比較
確かに、日本におけるペット保険市場は毎年2桁成長を続けており、21年度には1000億円を超えました。さらに日本全国の犬・猫飼育頭数の保険加入率はわずか12~13%程度といわれ、伸びしろはまだまだ残されています。
現在、我が国の保険業界は少子高齢化、人口減少等により従来のままのビジネスモデルでは存続が危ぶまれています。そんな中でペット保険市場は数少ない有望マーケットです。現在は数少ないペット保険系損害保険会社と小規模の少額短期保険会社でシェアを争っていますが、一方で既に個人分野に大きな足掛かりを構築している他業種の企業もペット保険市場へ目をつけ始めています。
日本のペット保険市場は経営統合や売却が進み今後淘汰されていくものと思われます。既に少額短期保険のペット保険会社の中には経営破綻に追い込まれてしまった会社も出ています。
ペット保険は飼い主にとって必要ではあるものの、しっかりとした経営基盤の会社を選ぶことがペットにとってもペットオーナーにとっても必要です。
加入率が高い、ペット保険先進国のヨーロッパにおいては日本よりも既にペット保険マーケットは成熟しているにも関わらず保険会社数は日本よりはるかに少ないです。ペット保険専門会社というよりは個人向けの生命保険や損害保険を取り扱っている大手保険会社の一部門が取り扱っているケースが多く上記の第一生命保険会社によるアイペット保険会社買収も欧州のペット保険ビジネスモデルを意識したものであろうと思われます。
アマゾンの新規参入判明でペット保険が大競争時代へ
2022年米アマゾン・ドット・コムが、損害保険大手のあいおいニッセイ同和損害保険と組み、ペット保険市場に参入することが明らかになりました。具体的な商品スペックや商品投入の時期は最終調整中。ただし、初期段階で描いていた22年11月中の商品ローンチからは遅れ、始動するのは2024年となりそうです。ここで、ペット保険市場の概要を簡単に整理しておきます。
ペットの飼育頭数は2021年で約1600万頭(ペットフード協会)。1年以内の新規飼育者による飼育頭数は増加傾向にあり、新型コロナウイルス感染症がまん延する前の19年と比較して、2年連続で増加しています。コロナ禍でステイホームを強いられたことがきっかけとなり、ペットとの生活に癒しを求める人々が増えていることが背景にあると考えられています。
それに伴い、ペット保険の収入保険料も伸びて21年度の収入保険料は損保が867億円、少短が197億円となり、前年度比14%増の合計1000億円を超えました。少なくとも9年度連続で二桁成長を続けています。ところが、ペット保険の加入率は未だ12~13%とされており、まだまだ伸びしろがある有望市場なのです。その結果現在、損保と少額短期保険業者が入り乱れて激しいシェア争いを繰り広げています。
現在の市場シェアのトップ3は、アニコム損害保険とアイペット損害保険、ペット&ファミリー損害保険の損保3社。この3社で、実にシェア約70%を占めます。中でも、約45%のシェアを誇るアニコム損保は、ペット市場を切り開いてきた業界パイオニアでペット共生に関する各種情報の発信も常に行われています。
なおアニコム損保は株式会社アドバンスネット(イチイグループ)とも業務提携をしておりペット共生型不動産物件の共同企画や情報共有をしております。
ペット保険競争激化、新たなビジネスモデルに挑戦」
こうした有望市場のペット保険だけに、参戦する既存保険会社が相次いでいます。第一生命ホールディングスがシェア2位のアイペット損保を完全子会社化すると発表。さらにアフラック生命保険が、米ペット保険大手のトゥルーパニオンと合弁会社を設立し、経営破綻したペッツベスト少額短期保険の契約者を引き取り23年4月に事業を開始すると表明しました。
そこに、更に巨大IT企業であるアマゾンの参戦です。アマゾンはあいおい損保と組むものの、ロジスティックス企業、本格参入には懐疑的とする見方もありますが、一方で保険業界の常識にはとらわれない攻め方をしてくるのではないかと警戒する双方の声が上がっています。
なおアマゾンは現在でもペット用シーツ、おむつ、フードの販売で急激にペットマーケットに進出を進めています。実際これらのブランド商品はホームセンター等よりアマゾンから購入した方が安価です。また獣医にて処方されたペット用医薬品は獣医にて再診時に受け取るよりアマゾンで同様の薬を購入した方が安く手に入ります。こうした状況からペット保険も既存のペット関連商品ユーザーに良い補償内容で提供する展開が容易にできるのです。
既存のペット保険業界がアマゾンに対して懐疑的な見方をしているものの、その脅威については近い将来必ず現実となると考えます。なお、アマゾン以外にも携帯電話会社、クレジットカード会社、生命保険会社他から等続々と参入が始まっています。
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