本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。
オーナーが決断力と資金力、バイタリティを必要とする時
事務所ビルやアパート・マンションの中(特に最上階)に物件オーナーのお住まいがある場合があります。今回はビル内のオーナー宅(居住用)をオフィス仕様へコンバージョン(用途変更)したときのお話です。
「私、引っ越そうと思うんです。その後はどうしようか不動産会社の考えが聞きたくて・・・」
ビルオーナーに理由を伺うと、親族のご逝去や独立でここ数年一人暮らしになったため、無駄も多いので・・・とのお話でした。
住宅より5割増の賃料「全てオフィスがいい」
都心部の駅徒歩2分の好立地で、最上階(約30坪)とその下の階(約30坪)のメゾネットをお一人で利用されています。確かに、水廻りが2カ所あるなど勿体ない間取りです。
当初、最上階を居住用仕様でフルリフォーム、その下の階をオフィス仕様へと用途変更する案が出ました。住み慣れたところで、そのまま生活できるのは利点です。
しかし、近隣の一般的な住居は新築で坪単価15,000円程度、オフィスは坪22,000円程度。投資効率や将来の物件の出口を考え、自己利用する部分は無くし、全てオフィス仕様とすることになりました。
文字にすると簡単なようですが、オーナーの賃貸経営の決断力、資金力、バイタリティを要する案件でした。
ビフォー・アフター
建築確認の申請は必要?不要?
設計施工会社が決まったので、オフィス仕様へ用途変更するための改装計画について様々な話し合いが行われました。
建築基準法上の「用途変更」の確認申請について設計事務所に確認すると、住宅から事務所への用途変更は、床面積の大小にかかわらず確認申請は不要でした。変更後の事務所が特殊建築物に当たらないからです。
ライフラインへの対応
事務所なのでガスは撤去することにしました。水道は既存の口径で足りるのでそのままにします。
問題は電気です。一般家庭用の電力では足りません。調査してもらうと、キュービクルの容量にはまだ余裕があったため、増量することになりました。
エアコンはマルチか1対1か
このビルの事務所部分は、ビル用マルチエアコン(複数台の室内機を1台の室外機で動かすこと)でした。
マルチエアコンのメリットは省エネ、省スペース、省工事です。但し、室外機が故障すると(制御システムの関係等で)室内機も同時に全てを交換しなければならないというデメリットがあります。
また、室外機が置いてある屋上まで搬入経路がない場合(機器サイズが大きいとき等)は、クレーン車で荷揚げをしなければなりません。クレーン車を使用する場合の道路使用許可には時間もコストも掛かります。故障から交換まで1ヶ月以上要してしまうこともあり得ます。
室外機と室内機は1対1、故障リスクの分散へ
当たり前ですが故障するのは稼働させているときなので、エアコンの使用が必須な時期は注意しなければなりません。
ある時、別のビルですが、交換から7年目なのに、予想外に早い故障のためエアコンの交換が必要になり、青ざめました。1ヶ月も使えない状況にはとてもできません。
エレベーターに室外機が乗らなかったので、荷揚げ屋さんを呼び、非常用階段から手運びで10階まで運んでもらったほか、休日に施工することもありました。通常の1.5倍近い施工費になってしまったのです。
そのような話を設計会社にすると、今回はマルチエアコンの故障リスクを分散させるために、室外機と室内機は1対1で稼働させることになりました。
室外機置場が懸念されましたが、元々居住用だったためバルコニーが付いていました。バルコニーに置くことで懸念は解消されたのです。
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