本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。

後編/適切な期間告知し保管したうえで、処分することの意味

前回のお話の「ステップ7」では、撤去業者の選定が肝要だと述べました。不動産管理会社も色々ですが、放置自転車撤去業者も色々です。2017年以前は放置自転車を無料で撤去してくれる業者が多かったです。

人が働いているのに無料なのには理由があります。撤去する自転車をリユースしたり、鉄くずとして売却することで、作業代や車両代、搬出代を無料にできるという理屈でした。

ところが、急に有料の業者が多くなる時期がありました。2018年より中国が廃棄物原料の海外輸入を禁止したため、リサイクル等の行き先が狭まり、コストアップしたことが原因だと思われます。確かにこの頃、内装工事で出る廃材等の処分費用は値上げの依頼がありました。

しっかりとした業者の選定、何よりも重要

放置自転車 撤去業者

本件のオーナーは台数が多いし、理不尽なことでの金銭負担は嫌なので極力費用を抑えたいご意向でした。
お気持ちは理解できますが、業者さんが動けば費用がかかるのは当然です。
ところが数社見積もりを取ってみると今回は無料の業者を発見できました。

ロシアのウクライナ侵攻でアイアンショックやウッドショックなどの言葉が新聞紙面に出てきたころでした。このため鉄スクラップの国際相場が上がっていたようです。

無料業者の中にはコンプライアンス的に問題となる処理を行う業者もいるようなので、どんな会社なのか、産業廃棄物収集運搬車の許可番号の掲示、責任の所在が明確か、廃棄物の行方や履歴の管理、それらの報告がしっかりした業者を選定することが肝要です。

産業廃棄物収集運搬車の許可番号
車体に掲示されている「産業廃棄物収集運搬車の許可番号

人の物を同意なく廃棄、重たい行為であると胆に

放置自転車は法的には占有離脱物です。誰か所有者がいることを前提に動きます。他人の所有物を同意なく廃棄するという重たい行為であることも念頭におき、管理権原に基づいて適切な期間を設けて告知し、適切な期間をおいて保管し、適切に処分することです。

一つでも欠けると事後、不測の事態が起こる確率が上がるので、工程ごとに注意を払います。撤去完了後に恐喝まがいの言いがかりをしてくる人間がいることを想定し、記録に残しています。最悪の事態を想定して手順通りに実行することが必要です。

今回は大掛かりな撤去作業で心配もありましたが、時が経過してもクレームは無く、杞憂に終わりました。放置自転車が撤去されたあとの敷地を見ると、スッキリした気持ちになります。
オーナーにも、正規の駐輪場利用者にも喜んでもらえたので、こちらも嬉しくなりました。

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