本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています
ネット回線は生命線!管理会社は保守運用まで考えている?
ビルの2フロアを借りてくださっているテナント様から連絡がありました。
会社が大きくなると、ビル内でもう1フロアを借り増しするのはよくある話です。
「今度、LANの引き換え工事をしますので、当社(6Fと9F)の間の階の
7Fと8Fの区画へ工事のために入室したいです。段取りをお願いします」
「?????」私は思考停止してしまいました。
理由を確認させて頂くと、6Fと9Fでサーバ、パソコン間の通信が必要とのことでした。
社内ネットワークを組む時に、VPN(バーチャル プライベート ネットワーク)を利用すれば、インターネット上に仮想の専用線を引くことと同様になるので問題が解決できます。
ですが、ランニングコストが掛ります。
一方で有線LANは初期工事費用だけで済み、通信速度が早い、安定している、セキュリティに強いといったメリットもあります。
そういう背景があり、もう1フロアを借り増したときに、LANケーブルを6Fから9Fのパイプスペース内で物理的に通す方法を選択したようです。
以前の管理会社には有線で6Fと9Fを直結することの承諾を取っていたそうです。
LAN工事のために入室が必要なことを誰も知らない・・
このビルはEPS(エレクトリックパイプスペース/シャフト)が専有部内にあります。
EPSを使用する工事は専有部内での作業が必要になってしまいます。
専有部内で起こる問題は専有部内で解決できることが理想ですが、そうもいかない事情が物件ごとにあったりします。
建築した当初はインターネットは存在しませんでした。
上記のような引込工事が行われる前提では設計されていなかったでしょう。
EPSの設置場所は保守運用のことを考えると、とても大事なことですね。
前の7Fと8Fのテナント様は今回依頼のあったテナント様のLAN工事のために、自社への入室を許可していたようです。
しかし管理会社の変更があり、弊社が管理を受託してから5年が経ち、この間に7Fと8Fのテナント様は入れ替わっています。
弊社はこのLANケーブルのことを知らなかったので、テナント様にはそのような負担の説明はしていませんでした。
管理会社には回線工事の記録が残っていない!?
管理会社によっては、回線工事の詳細まで記録が残っている場合があるかもしれません。
しかし、築年数や規模、オフィスグレードによっては、記録が残っていないと思います。
普段は見えない部分ですし、問題が起きない限りは誰も気にしません。
依頼のあったテナント様ご自身も、今回のLAN引き換え工事の話が持ち上がり、工事業者が現場調査しているときに、前回の工事の時に7Fと8FのEPS内を貫通させて直結したことを思い出したそうです。
ネット回線を通すために管理会社から入室のお願いをする
ビルオーナー側がビル保全のために貸室へ入室することについては、弊社の契約書約款に書いてあります。
しかし、テナント様の工事のために他のテナント様の貸室に入室することに関しては想定されていません。
私もご依頼のあったテナント様のインターネット環境が不便になることは本意ではありません。
すぐに7Fと8Fのテナント様に状況を説明しました。
すると、休業日かつ管理会社の立会いの下であれば入室は構いません、と双方から快諾を頂きました。
こういったお願い事をするときは、事業者とはいえ相手は人間です。
日頃のコミュニケーションが大切だと感じます。
ネット回線は現代の事業者にとって生命線の一つです。
ストップさせてしまうと仕事にならない会社が多いのではないでしょうか。
起こる損害が大きいので、地味ではありますが、保守運用まで考えた管理が必要になります。
次回は、ネット回線に泣かされたタワーマンションの事例をご紹介します。
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