本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。

前回に続き、居抜きについてのエピソードをお送りします。

居抜きについて三者三様

店舗の賃貸借契約の解約予告を取り消し、サロンの営業を続けるにも色々と解約したものを再契約しないといけません。そして従業員に戻ってもらったり、採用したりするのも大変です。

そのまま賃貸借契約を解約するにもビルオーナーは居抜きで契約が成立し、新借主が決まらない限り、退去時にはスケルトンにして欲しいと言っています。これでは予定してなかった原状回復工事費用が掛かってしまいます。

居抜きで借りて頂ける新借主を探すにしても、契約が決まるまで無駄な家賃を支払うこと、またそれが長期化してしまう懸念があります。
Aさんは不動産管理会社、相手方、ビルオーナーと話し合いました。

ところが、三者三様に自己の利益を守る言葉しか出てこなかったようです。
そして、弁護士を紹介して欲しいという冒頭の言葉に繋がります。

契約締結の前、閉店の準備を進めていると

「居抜き契約」とひと口に言いますが、

  1. 造作や什器の譲渡を行い、その所有権と金銭を交換する売買契約
  2. 原状回復義務の承継

など、「居抜き」特有の事象を盛り込み連携させた賃貸借契約の2つの契約が絡みます。

Aさんは1の契約も2の契約も締結されないうちに、閉店準備を行ってしまいました。
初めてのことだったので、そこまで考えが至らなかったそうです。
サロンの運営に関してはプロですが、店舗を居抜きで引き渡すという経験は無かったからです。

Aさんは確認しなかった自分にも非があると認めた上で
「口頭でも契約は成立するし、こちらも言われたことは全部協力してきたのに。相手方と不動産管理会社の対応は不誠実だし許せない!」
と訴訟も辞さない勢いです。

複数の当事者がいる問題はあらゆる視点・視座があるので、相談があった時点でこのAさんの言うことは真実ですが、事実とは限りません。
ここで事実を誤認し間違ったアドバイスをしては、余計に状況を悪化させる可能性もあります。

そして、不動産管理会社は法曹家ではありません。
当事者の間に入って問題を解決し、金銭を受領するような法律行為は出来ません。

着地点は「感情」と「勘定」のバランス探る

居抜きトラブル  話合い

Aさんには最低限想定される弁護士費用をお伝えし、それを支払ってでも訴えたいのか?
Aさん自身の「感情」と「勘定」のバランスがとれる点はどこなのか、じっくりお話を伺いました。

あくまで仮定として、想定される状況や可能性をお話ししました。
また、弁護士に相談する前に法テラスや宅建業協会の相談窓口、都庁の相談窓口などがあることをお伝えしました。

Aさんは
「法的に賠償を求められるのかどうか、専門家に相談して情報を整理してみます。少しでも判断材料を増やしたいんです。でも、話を聞いてもらううちに少し落ち着きました。事業全体のことを考えると、損切りも必要だと思います」と言われました。

今回は動産も絡む話でしたが、弊社がメインで扱うのは動産ではなく不動産です。
そこにオーナー様、借主様、そのご家族、契約形態、居住用、事業用、不動産会社などと様々な変数があり、答えは等比級数的に発生すると思います。

毎回、別の問題が起こり、毎回、答えが違う。大変だけれど面白くもあるところです。

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