2010年からの平均寿命の推移を見ると、犬猫ともに上昇傾向にあります(出所:ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」)。特に2012年から2015年にかけて平均寿命の伸びは著しく、犬は1.0歳、猫は1.3歳とそれぞれ平均寿命を延ばしています。

人間の高齢化とペットの高齢化との比較

参考に、人間の高齢化と比較してみましょう。下図のとおり、人間の平均寿命もまた直近5年間で1歳前後(男性は1.2歳、女性は0.8歳)延びています。しかし、5年間の上昇率で見ると、人間はせいぜい1~2%であるのに対し、犬は7.1%、猫に至っては9.7%も上昇しています。

寿命が15歳前後の犬猫にとっての1年間は、人間の4.5倍にも及びます(厳密には、体格等に因る)。すなわち、ここ数年間の平均寿命の延びは、人間に換算すれば平均寿命が約4年も延びたことになるのです。

猫の場合は室内のみで飼っているか否かで比較した結果、室内飼いの方が外飼いよりも平均寿命が2歳以上長いことがわかりました。外に出ることで事故やケガに遭う確率が高まるため、外猫は寿命が短くなりやすいのです。しかし、直近5年間の推移を見ると、外に出ない猫があまり寿命を延ばしていないのに対し、外に出る猫は2歳以上延ばしているようです。

超小型犬の平均寿命の上昇率

犬を超小型、小型、中・大型の3グループに分けると、超小型犬の平均寿命の上昇率が特に高く、犬全体の上昇率を押し上げていることが分かります。日本で飼育頭数が多いトイプードルやチワワ等はこの超小型に分類される(厳密には、定義による)ため、こうしたメジャーな品種を中心に平均寿命が延びている、ということと考えられます。

ペットの1年

犬や猫は、人よりも歳をとるのが早い動物です。1年に何歳くらい年をとるのか、人に換算すると何歳なのか調べてみます。ワンちゃんの年齢と人の年齢は、小型犬・中型犬と大型犬で違います。

  • 小型犬・中型犬:1年に4歳、歳をとる
  • 大型犬:1年に7歳、歳をとる

※幼少期の1-2年は成長スピードが早くなっております。

猫ちゃんの年齢も小型犬・中型犬同様に4歳ずつ歳をとります。

なお、2012年から2015年にかけて犬猫の平均寿命の伸びは著しく、犬は1.0歳、猫は1.3歳延びておりますがこれを人間に置き換えたとすれば犬は約4歳、猫も約5歳延びたこととなり、かなりのスピードで長寿化していることになります。

以上のとおり、ペットの高齢化は顕著に数値に現れていますが、これほどの延びはどのような背景(要因)の下で起きているのでしょうか。そこには、「飼育の質の向上」「動物医療の発達」「環境の改善」が関係していると考えられます。

飼育の質の向上

まず一つには、飼育の質の向上が考えられます。私たち人間が生活水準の向上とともに高齢化が進んだように、犬や猫にプレミアムペットフード等のより栄養価の高い食事を与え、ストレスをかけない飼い方をしてあげるようになったことが長寿命化に寄与したように思われます。

また、近年は犬や猫に関するメディアが多く現れ、いつでも簡単に適切な飼育方法を検索することができます。特にメジャー犬種に関する情報は豊富に揃っており、それ故に質の高い(適切な)飼育を行うことができるため、メジャー犬種の多い超小型犬が最も平均寿命の延びが大きいのかもしれません。

動物医療の発達

次に考えられる長寿命化の要因は動物医療の発達だ。ペットの家族化に伴い、ペットに対して人間と同レベルの診断を受けさせたいという飼育者が増えてきており、CTやMRIといった高度な医療技術が動物病院にも導入され始めています。現状、このような高度医療技術を導入している動物病院は大規模病院に限られますが、ペット保険の加入率の増加やペットの高齢化による疾病の多様化等が起因して、高度医療に注力する病院が今後増える可能性は高いと言えます。

例えば、二次診療(他病院の紹介による診断)に限り高度医療を提供することに特化している「日本動物高度医療センター」が2015年3月に株式上場を果たすなど、「高度医療」は動物医療業界でもホットなキーワードだと思われ、それが需要サイド(飼育者)にも浸透すれば更なる長寿命化が見込まれます。

環境の改善

3つ目に考えられるのがペットにまつわる環境の改善です。ペット産業全体が盛り上がり、あらゆるサービスが普及していくことでペットが過ごしやすい環境が整ってきています。ペットと飼育者が快適に過ごせるように設計された「ペット共生マンション」のようなインフラの整備から、旅行等の際にペットを預けたい人と引き受ける人をマッチングする「DogHuggy」のような新興サービスの登場まで、変化は様々です。

さらに、環境の改善としては、野良犬・野良猫の減少が挙げられます。近年は地方公共団体と動物愛護団体が協力して、犬猫の引取り・譲渡活動を行っていたり、野良猫に対するTNR(捕獲・不妊手術・元の場所に帰す)活動を行う地域も見られます。加えて、ワクチン接種の普及などで感染症対策が進んでいることもあり、結果として、外に出る猫の平均寿命が延びたと推測されます。

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弓達 隆章
Yudate Takaaki

[株式会社アドバンスネット ペット共生型賃貸管理業エグゼクティブアドバイザー]愛媛県出身、法大院卒(経営管理修士)。34年間の損害保険会社勤務を経て2018年「共生社会におけるペット保険の現状と将来」を慶大保険学会で発表。日本と海外におけるペット共生文化の相違、今後の展望をまとめる。その後、大手賃貸管理会社にて保証ビジネス担当。2022年よりイチイグループにてエグゼクティブアドバイザー兼ライター。ペット共生型賃貸不動産オーナーのための経営情報、シニア向けペット共生のすすめ、自治体と協調したペット防災等の情報発信中。防火防災管理士、賃貸住宅経営管理士。 なおペットはずっとマルチーズ派。