本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。
前回は、旧管理会社へ漏水部分の修繕履歴を問い合わせてみたものの埒があきませんでした。今回は、管理会社としてトラブルを防ぐ必要な事を考えてみます。
借主・貸主との意思疎通こそ「管理実務の要諦」
先代が杜撰な管理会社にお任せしていたため、これを引き継ぐ2代目オーナー様はスタートから大変な思いをしました。
先代が管理会社に言われるがまま、居抜き(造作譲渡)や転貸の許可を繰り返しているうちに、現在の転借人と現在の用途になってしまっていたそうです。
管理料を受け取っているのにこれで管理をしているとは言えるのでしょうか。オーナー様にリスクを押し付けて、旨い汁を吸う寄生虫のようです。「用途違反は契約解除」と原契約書には書いてありましたが、これを実現するのは容易でない場合も多いです。
管理会社の視点ですと、「こんないい加減な契約をすると管理する側も大変になるのに、何故そのようなリスクを取ったのだろう」と不思議でなりません。
リスクに気付かないからなのか、リスクより目先のリターンに眼がくらむからなのか。
借受希望者の既存店舗を見に行くことも
オーナー様からすると、申込み時点では借受希望者についての情報が不足すると思います。
ペーパー上の情報が唯一の判断材料の場合もあるでしょう。現在はインターネットの普及で個人でも調べやすくなりましたが、ネット上の情報はいくらでも都合の良いように作ることができるものです。
私は申込書や決算書等のペーパー上の情報、そこに出てくる情報をさらに検索します。財務三表だけではビジネスの実体が把握できないことも多いです。そのような時はさらに勘定科目内訳明細書の提出をお願いすることもあります。
たとえば売掛金や買掛金の内訳を見ると取引先が分かります。その取引先の情報も調べることでより解像度の高い審査が行えます。それでも足りない場合、既存店舗を見に行ったり、借受希望者との接触をさらに増やします。
物件案内時、借主側の内装業者の内見時など機会のあるごとに面会します。借受希望者の本来の姿が見えてきますし、会話の内容や質問への回答などで、ペーパー上では見えなかった潜在的な情報や非言語情報に触れることで判断材料が増えるからです。
もし違和感があれば、さらに質問したりエビデンスの提出を求めることもあります。
オーナーへのフィードバックを心がけ
その内容はオーナー様にフィードバックし、オーナー様の判断材料の量も質も上げようと心掛けています。やるべき事をやっても完璧はありませんが、前述のようなトラブルは避けることができたかもしれません。
借受希望者とのコミュニケーションは審査という点でも重要ですが、不動産取引をする上でお互いの齟齬から生まれるトラブルを生じさせないためにも重要です。
借主が希望通りに開業して売上を上げられること、貸主が安定した賃貸経営をできること、その要諦は不動産会社が借主・貸主とのコミュニケーションを大切にすることです。
もちろん新型コロナウィルスの影響でZoomなどオンラインのコミュニケーションも増えましたが、やはり対面も大事にしたいと思っています。
〈後日談〉
用途違反だった怪しいお店が立ち退いた後は整体院が入りました。
Googleの口コミを見て、反響が良いとこちらも嬉しいものです。
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