本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。

水廻りが無断で造作されていたけれど・・・

前回、商業系ビルの2代目オーナー様からビル管理に関するご相談を受けたお話しをしました。先代オーナーが残した転貸借契約に落とし穴が見つかり、ずさんな管理会社から移管したものの驚くべきことが判明しました・・・。

そうして弊社に管理が移管した後、月1回のメーター検針をするための打ち合わせで弊社提携のビルメンテナンス会社と入室しました。すると、契約上の使用目的とは違う業態の怪しいお店が入っています。

内装承諾書に記載のない水廻りが無断で造作されています。
旧管理会社も気が付かないわけがありません。
その場で店舗の代表者に話をしました。この方が転借人のようです。

しかし、用途違反を指摘しても知らぬ存ぜぬです。
転貸借契約解除のために転貸人(マスターリース契約の借主)の法人住所を訪問すると、既に別の法人が借りています。
まるで探偵のように手掛かりを探しました。

何とか転貸人の所在が分かり、連絡すると名義社長のようなニュアンスです。

転借人からの賃料がまともに入ってこないこと、資産区分が分からなくて設備の修繕を要望されても費用負担や責任が明確でないこと、警察から取り調べや年1回の誓約書提出、想像しないリスクに見舞われてマスターリース契約を解約したい意向が読み取れます。

転貸人も転借人も「契約はもう解消したい」

転貸人も転借人も「契約はもう解消したい」

そんな折り、該当のフロアから階下に漏水したため、修繕が必要に。
無断で造作した水廻りは転貸人が直すべきか、転借人が直すべきか費用負担で揉めています。

保全が優先のため説明の上、水道メーターの2次側から止水します。

転借人からはエアコンが壊れても直してくれないし(これも資産区分が曖昧です)、今度は水道がストップして営業にならない。
売上が上がらなければ賃料も払えない。こんな契約(サブリース契約)は続けたくない。

渡りに船というのでしょうか、運良くサブリース契約は転貸人も転借人も解消したいようです。
オーナー様が訴訟を起こす手間が省けそうです。

用途違反も「知らぬ存ぜぬ」のテナントに困惑

因みに旧管理会社へ漏水部分の過去の修繕履歴を求めましたが、「履歴があったら担当者から連絡させます」を繰り返して埒が明きませんでした。

次の第3話では、今回の事例はどこに問題があったのかなど要点を整理し、管理会社としてトラブルを起こさないために必要なことについて考えてみます。

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