本稿は、イチイPM事業部の実務責任者・野上が書き留めた、これまで経験してきた現場のさまざまな事例について連載でお届けしています。

設計やビルメン、管理会社が協力すれば、リスクは軽減できる!

前回より続いて、ビル内のオーナー宅(居住用)をオフィス仕様へコンバージョン(用途変更)したときの話をリポートします。

その後、設計会社からは積載荷重に関して次のような指摘がありました。
今回のフロアは構造的には住宅用積載荷重を前提として計算されています。事務所用フロアと居住用フロアでは、下記の通り荷重設定が異なります。

床用大梁・柱・基礎用地震用
住宅180kg/㎡130kg/㎡60kg/㎡
事務所300kg/㎡180kg/㎡80kg/㎡

この数値は計算する上での基準値であり、積載荷重は実況に応じても良いことになっています。賃借人のモノの置き方に制約を設ければ事務所として貸すことは可能ですが、不動産会社としては重要事項説明でその旨を説明することが必要となります。

賃借人が制約以上の荷重を積載した場合は、建物全体のリスクに繋がる可能性があるのです。
建物は重くなるほど、受ける地震力が大きくなり、積載の度合いによっては耐震強度を超える可能性もあります。

事務所利用のテナントがこの基準以上の荷重の大きなモノを置くことは少ないですが、注意は必要です。
重要事項説明自体はテナントの代表者や総務の方が受けることが多いです。
レイアウトに関わる人に伝わらないと意味がありません。

その辺りを「どのようにすれば問題が起こらないか?」と考え、事前にオペレーションを決めてしまう必要があります。

トイレに関しても打ち合わせがありました。今回トイレは共用部に無いため、専有部内に設置することになります。トイレ設置に関しては労働衛生基準に準じないといけません。

直近の改正では、常時10人以内の事業所は「独立個室型」のトイレを設置すれば、一つのトイレを男女が使用してもかまわないという内容になっています。30坪くらいのオフィスですと、テナントの従業員は10名を超える場合が多いです。また、数人の規模の事業者でも男女共同トイレは嫌われます。

そこで、一度作ってしまうと増設は困難になると考え、ワークスペースは減りますが、最初から男女別トイレとしました。

住居からオフィス仕様にすることで思わぬ障害になることは意外と多いです。

専門の設計施工会社、ビルのニーズや起こるトラブルを熟知している不動産管理会社、ビルメンテナンス会社、そうした多くの人たちの協力があれば、運用のトータルコストやトータルリスクは削減できると思います。

今回は予算額が大きな改修工事でしたので、反響が特に気になります。
住居を解体中にご案内が入りましたが、見た目は壊れかけの住居。イメージが余りにもかけ離れているため決まりません。OAフロアや天井ができ上がり、LED蛍光灯が設置された頃、上場企業に2フロアの両方とも借りていただけました。

改修したことで近隣物件よりは比較優位となり、募集への懸念は杞憂に終わったのです。
何よりもオーナー様に喜んでいただけたことが、最高のエンディングでした。

改修工事 ビフォー・アフター

改修工事1
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