『ペット共生型賃貸』にするとオーナー様にとってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。アパート経営オンライン(不動産賃貸経営業の情報メディア)を参考にアドバイスいたします。

退室時における原状回復のトラブルを未然に防ぐ

前回のリポートでは退室時に起こる現状回復のトラブルを紹介しました。

前回のリポート:【ペット共生型賃貸を考える #1】ペット可物件にするには

このようなトラブルを未然に防止する観点からは、①入居直前の室内の写真を撮影しておくこと、②退去直後の室内の写真を撮影しておくことが必要になりますが、それに加えて、原状回復業者の作業報告書などを作成してもらうことも重要となってきます。

なお、実際の裁判において、カーペットに残っていたしみがペットのものとは断言できない、ペットの臭い残存していたと認めるに足りる証拠がない、などとして原状回復を否定されている事例がありますので、留意が必要です。

原状回復の範囲や金額に関する紛争が生じることは避けたいところですが、これをできる限り防ぐためには、①契約書に、ペットの飼育によって発生するキズ、汚れ、臭いがどこまで原状回復義務の対象になるのかを細かく記載しておくという方法、②ペット償却金条項(ペット飼育を認める代わりに、一定の合理的な金額を保証金から自動的に償却する条項)を設ける方法などが考えられます。

前述したとおり、ペットによるキズ、汚れ、臭いについては、「ペットによって生じたものではない」「入居前から存在した」と主張されることがあるため、どこまで細かく契約書に記載しても、立証上の争いが発生する可能性があります。

そういった立証上の争いを防ぐという観点からは、ペット償却金条項*を設けておく方が望ましいといえるでしょう。

ペットを飼育した場合の修繕費用

実際、ペットを飼っている場合は以下のようなものに修繕費用がかかります。

  • 壁紙の汚れ・傷・破れ
  • フローリングのキズ
  • 畳の傷
  • 床や畳の(おしっこ等による)シミ
  • 柱の傷
  • ふすま、障子の汚れや破れ
  • ペットのにおい

原状回復工事の際に何にいくらかかったのかを理解していないと、想定していた以上の現状回復費が発生してしまっているケースもあります。貸主と借主の修繕費用の負担割合など双方でもしっかり理解していないと、貸主側が支払わなくてもいい費用を支払ってしまう可能性があるため、どの割合の支払いが必要かを知っておかなければなりません。

退去費用にどの程度の費用がかかるか把握したうえで、退去費用の精算内容の金額もれがないかチェックできることが大切です。原状回復の範囲や金額に関する紛争が生じることは避けたいところですが、これをできる限り防ぐためには、契約書に、ペットの飼育によって発生するキズ、汚れ、臭いがどこまで原状回復義務の対象になるのかを細かく記載しておくという方法が基本です。

ペット償却金条項

賃貸物件において、ペット飼育を条件とする賃貸借契約敷金償却特約があります。この特約は、借主がペットを飼うことを許可される代わりに、敷金から一定の金額を自動的に償却するというものです。具体的には、以下のポイントが該当します。

敷金全額償却の同意借主がペット飼育を条件に、敷金の全額償却に同意した場合、部屋をどれだけきれいに使ったとしても、敷金は全額償却されます。
原状回復費用の超過分貸主は、原状回復の費用が敷金の償却額を超過した場合、その超過分を借主に請求することができることがあります。

例えば、賃貸アパートへの入居時に、借主がペット(小犬)を飼いたいと言い、敷金の全額償却を条件に契約を結んだ場合、ペット飼育後の原状回復費用等を考慮して、敷金の全額償却は合理的な取り決めとされます。

ペット飼育可能な物件のオーナーは、このような特約を設けておくことで、立証上の争いを防ぐことができます。ペット償却金条項を設けることで、ペット飼育に伴う損耗に対する対応が明確になり、トラブルを回避しやすくなります。

ペットを飼っていた場合の平均的な退去費用と内訳 

ペットを飼っている場合、「家賃+10~20万円」が平均的な退去費用となります。
もし、入居時の敷金が家賃1ヶ月分だけなら追加で支払いが必要になる可能性が高いといので2ケ月は受領すべきです。理由は以下のとおりです。しかしいずれにしても通常損耗に比較すると以下のような費用が掛かるケースが多いため、しっかりとしたペット共生型賃貸専門の管理会社に管理を委託し、マナーの良い入居者を入れてもらう事が一番安心です。

ペットの一般的習性
1.壁紙の汚れ・傷・破れ

壁紙の張り替え費用は、6畳の部屋でおよそ4~5万円程度です。ペットとして飼われているさまざまな動物には、以下のような習性があります。

壁紙をひっかいてしまい、一部がボロボロ…というのはペットを飼っている人には経験がある人が多いはずです。ひっかいたりしなくても、体を同じ場所に何度もこすりつけることで壁紙が擦れてしまい、けば立ったり汚れたりしてしまうこともあります。ペットによって破れたり傷ついたり汚れてしまった壁紙は、借主に修繕費用を負担してもらいます。

2.フローリング・畳の傷・傷・破れ

フローリングの張り替え費用は、6畳の部屋でおよそ10~15万円程度で、畳を6畳すべて表替えした場合、2~3万円程度です。わんちゃんや猫ちゃんを飼っている場合、元気いっぱいな子は部屋の中を走り回りますが、フローリングや畳にひっかき傷がついてしまうこともあり、よく見ないと見えないようなうっすらとした傷ではなく爪の跡がはっきりとわかるような傷の場合は、借主に修繕費用を請求しなくてはなりません。

3.柱の傷

柱の傷の修繕費用は、2~6万円程度です。わんちゃんが柱を噛んでボロボロにしてしまったり、猫ちゃんが柱で爪とぎをして傷だらけにしてしまうこともあります。柱に故意や不注意で付けられた傷は、借主が修繕費用を負担しなくてはなりません。

4.ふすま・障子の汚れや破れ

ふすまや障子は、1枚張り替えるごとに2,000~8,000円程度かかります。ふすまや障子には紙が貼られているため、簡単に破かれたり汚されてしまいます。ペットによっては穴をあけてしまうこともあります。そのような場合は、ふすまや障子の張替が必要となり、その費用は借主負担になります。

5.ペットのにおい

ハウスクリーニングは、1Rの部屋であれば3万円程度です。

ペットを飼っている人はにおいに慣れているため「動物くさい」とはなかなか感じられませんが、壁や床にはペットのにおいがしっかりと染み付いています。特にペットのトイレ周りやケージ回りはにおいが付きやすく、自分でペットのにおいを完全に消すことは困難です。

ハウスクリーニングや脱臭の費用も借主負担になります。なお、数年間放置されたペット臭や、糞尿が部屋に染み付いている場合は、ハウスクリーニングだけでは限界があります。このような場合には、リフォームなどの対応が必要になることもあります。もちろんその費用は借主負担です。

ペット臭を除去するためのハウスクリーニングについて 

修繕箇所相場
壁紙800~1,000/1㎡
フローリング8,000~15,000円/1㎡
表替え・・・3,000~5,000円/1畳
交換・・・10,000~25,000円/1畳
10,000~60,000円/1本
ふすま・障子ふすまの張替え・・・3,000~8,000円/1枚
ふすまの交換・・・10,000~30,000円/1枚
障子の張替え・・・2,000~8,000円/1枚
ハウスクリーニング25,000~50,000円/1R・1K
修繕箇所ごとの相場一覧 

ペット臭は、部屋にこびりついてしまうことが多く、一般的なハウスクリーニングでは難しい場合があります。しかし、専門的なハウスクリーニング業者に依頼することで、効果的に臭いを取り除けます。

 ペット臭に対応したハウスクリーニング
  1. ペット臭に対応したハウスクリーニングでは、専用の機械や消臭剤を使用して、臭いの原因を特定し、部屋全体を強力に脱臭します。
  2. オゾン脱臭などの方法を用いて、ペット臭を効果的に除去できます。
  3. プロの技術と知識が必要なため、ペット臭に対応したハウスクリーニングをおすすめします。
 価格相場
  1. ペット臭を除去するハウスクリーニングの価格は、一般的なハウスクリーニングと比べて高額ではありません。
  2. 一般的には、広さにより3万円から20万円程度です。

参考:株式会社リスクベネフィット

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株式会社イチイ 電話:03-5379-5272
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弓達 隆章
Yudate Takaaki

[株式会社アドバンスネット ペット共生型賃貸管理業エグゼクティブアドバイザー]愛媛県出身、法大院卒(経営管理修士)。34年間の損害保険会社勤務を経て2018年「共生社会におけるペット保険の現状と将来」を慶大保険学会で発表。日本と海外におけるペット共生文化の相違、今後の展望をまとめる。その後、大手賃貸管理会社にて保証ビジネス担当。2022年よりイチイグループにてエグゼクティブアドバイザー兼ライター。ペット共生型賃貸不動産オーナーのための経営情報、シニア向けペット共生のすすめ、自治体と協調したペット防災等の情報発信中。防火防災管理士、賃貸住宅経営管理士。 なおペットはずっとマルチーズ派。