新年の幕開けとともに発生した元日の「能登半島地震」。大地震はいつでもどこでも起こり得ることを、私たちは否が応でも思い知ることになりました。

そんななか、被災者の生活を守る「賃貸型応急住宅制度」が改めて注目を集めています。
能登半島地震で被災された方々にいち早く提供することはできないものでしょうか。

都道府県等が賃貸住宅の空室を借上げ、被災者に提供

あまり知られていませんが、東日本大震災や熊本地震など近年の大規模震災では、「民間の賃貸住宅」が被災者の生活支援で大きな役割を果たしました。

契機となったのは2011年の東日本大震災。住宅の全壊や半壊で住む場所を失った多くの被災者を受け入れたのが、民間賃貸住宅のオーナーや管理会社だったのです。

過去の震災時には実例が少なく、本格的に行われた初のケースでした。

契機は東日本大震災 家賃は自治体が負担

この取り組みは「賃貸型応急住宅制度」と呼ばれます。

これは災害により住宅が全壊等の被害を受け、自分の資力では住まいを確保できない被災者に対して、都道府県などが民間賃貸住宅の空室を自ら借り上げて提供する(災害救助法に基づく)制度です。
家賃などは都道府県等がオーナーまたは管理会社に支払います。

それまでは災害時に住宅を失った被災者に対しては、仮設のプレハブ住宅を建設して提供すること(建設型応急住宅制度)が一般的でした。

しかし、東日本大震災のような大規模災害では必要な戸数が供給できなかったため、既存の空室を活用する方向へと大きく舵を切ったのです。

東日本大震災では空室の借り上げ戸数が約6万8千戸、16年の熊本地震では約1万3千戸に達しました。

東京都と日管協が災害時に連携 オーナーに空室提供を要請

熊本地震以降の各地の災害でも、既存の空室を活用していち早く提供できる「賃貸型応急住宅制度」が重要な役割を担っています。
最近では、2023年9月の台風に伴う大雨で700棟余りの住宅が被害を受けた千葉県が現在、本制度を実施中です。

当社代表の荻野が副支部長を務める(公財)日本賃貸住宅管理協会(日管協)東京都支部と東京都住宅政策本部は20年12月、賃貸型応急住宅に関する官民の協力体制づくりで合意(協定を締結)しました。
名称は「震災時における民間賃貸住宅の提供に関する協定」です。

協会の会員であるイチイグループは災害が発生したとき、当事者として賃貸型応急住宅の供給に取り組んでまいります。
オーナー様にはご協力いただけますようお願い申し上げます。

自治体・被災者等との三者による 2年の定期借家契約

賃貸型応急住宅制度の主な内容については次の通りです。

本制度のもとで既存の空室を被災者に提供する方法としては2つあります。
一つは被災者が不動産店に出向いて物件を探す「自ら探す方式」と、もう一つは(自ら探すのが難しい被災者に対し)自治体が探して貸主と借主をつなぐ「マッチング方式」です。

賃貸借契約の内容

1:都道府県等と被災者、貸主との三者契約とする

2:契約の種類は定期建物賃貸借契約

3:初期費用の支払いは後払い

4:契約期間は原則2年間

自治体負担の金銭

家賃、共益費または管理費(通常支払う額)、礼金(上限は家賃1カ月分)、仲介手数料(上限は家賃0.55カ月分)、損害保険料(自治体が自ら保険に加入)、入居時鍵等交換費用(実費相当額)、退去修繕負担金(上限は1年あたり家賃1カ月分)

入居者負担の金銭

公共料金(光熱水費)、駐車場使用料、自治会費など

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