賃貸住宅の換気扇が故障したとき、「修理費用や交換費用はオーナーと入居者、どちらが負担するのか」と迷うことがあります。

特に、設置から20年以上経過した換気扇では、経年劣化による故障なのか、入居者の使い方に原因があるのかによって、費用負担の考え方が異なります。

通常の使用による経年劣化や設備の老朽化が原因であれば、修理・交換費用は原則としてオーナー(貸主)の負担です。

一方、入居者の故意・過失や、清掃を怠ったことによる故障などでは、入居者が費用の一部を負担する場合もあります。

(参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」国土交通省)

20年経過した換気扇の修理・交換費用は、原則オーナー負担

賃貸住宅に備え付けられた換気扇は、室内の空気を入れ替え、湿気や臭いを排出するための住宅設備です。

民法第606条では、賃貸人は賃貸物の使用・収益に必要な修繕を行う義務を負うとされています。ただし、賃借人の責任によって修繕が必要になった場合は例外です。

大家さん「退去した入居者の部屋を確認したら、台所の換気扇が動かなくなっていたんです。修理費の一部を負担してほしいと伝えたら、『あんなに古いのに』と言われまして……。確かに、設置してから20年以上経っています。」

管理担当者「20年以上使用しているのであれば、まずは経年劣化による故障を疑う必要がありますね。通常の使用による故障なら、オーナー様の費用負担が基本となります。」

大家さん「長年使っていても、入居者に修理代を請求できる場合はあるのでしょうか?」

管理担当者「故意に壊したり、必要な手入れを怠ったことが故障の原因になったりした場合は、負担を求められる可能性があります。ただし、使用年数や故障原因を確認せず、交換費用を全額請求することは適切ではありません。」

このように、費用負担を判断する際には、単に「壊れた」という事実だけでなく、故障の原因を確認することが重要です。

換気扇の故障原因による費用負担の違い

故障・状況費用負担の基本的な考え方
長年使用した換気扇が自然に故障した原則オーナー負担
モーターやスイッチの経年劣化原則オーナー負担
通常の使用で生じた油汚れ・ほこり原則オーナー負担(通常損耗に当たる場合)
清掃を長期間怠り、著しい汚れが故障の原因となった入居者負担となる可能性あり
入居者が誤った使い方で破損させた入居者負担となる可能性あり
契約書に特約がある設置・契約の経緯に応じて判断
契約書に修繕費用の特約がある特約の内容や契約書に修繕費用の特約がある有効性を確認

※実際の費用負担は、故障原因や契約内容、経過年数などによって異なります。

換気扇の耐用年数は何年?20年使用した場合の注意点

換気扇を20年以上使用している場合、故障していなくても安全性や換気能力を確認することが重要です。換気扇には「設計上の標準使用期間」が設定されている製品があります。

例えば、日立の公表資料では、一般的な換気扇(レンジ用フードファンを除く)は15年、レンジ用フードファンは10年とされています。

ただし、これは標準的な使用条件において、安全上支障なく使用できる期間の目安です。製品によって設定は異なり、期間内の故障がないことを保証するものではありません。

国土交通省の「原状回復ガイドライン」ではどう考える?

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復について、通常の使用による損耗や経年変化を入居者の負担としないことを基本としています。

一方、故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える損傷については、入居者の費用負担が発生する場合があります。

例えば、長年使用した換気扇が自然に壊れた場合、交換費用はオーナー負担が基本です。しかし、入居者が通常必要な清掃を怠り、著しい油汚れを残した場合などは、清掃費用の負担が問題になることがあります。

また、入居者の過失によって設備を破損した場合も、損傷内容や設備の経過年数などを踏まえて負担範囲を判断します。ここで大切なのは、設備の交換費用と清掃費用を区別することです。

古くなった換気扇を新しい製品に交換する費用を、そのまま入居者へ全額請求することは適切とは限りません。入居者に負担を求める場合には、故障原因や請求内容を明確にし、合理的な金額を算定する必要があります。

参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

油汚れや清掃不足が原因なら、入居者に請求できる?

キッチンの換気扇は、調理による油汚れやほこりが蓄積しやすい設備です。ただし、油汚れがあるという理由だけで、入居者負担と決めることはできません。

通常の生活で生じる汚れと、清掃を怠ったことによる著しい汚れは区別して判断する必要があります。

入居者負担を検討できるケース

例えば、次のような状況が考えられます。

  1. 長期間の清掃不足により、通常の使用を超える著しい油汚れが付着している
  2. 誤った清掃方法によって、換気扇の部品が破損している
  3. 異常が発生していることを知りながら放置し、損傷を拡大させている

ただし、これらに該当するように見えても、実際の故障原因との関係を確認することが大切です。特に20年以上経過した換気扇は、モーターや部品の老朽化が進んでいる可能性もあります。

清掃不足が見られることと、その清掃不足が故障を引き起こしたことは別の問題です。

オーナー様は故障前の計画的な交換も検討を

20年以上使用している換気扇は、故障してから交換するだけでなく、設備更新の計画に組み込むことも検討したいところです。換気扇の不具合は、入居者の日常生活にも影響します。

特に、浴室の換気能力が低下すると湿気がこもりやすくなり、結露やカビの発生につながる場合があります。また、キッチンの換気不良は、調理中の臭いや湿気が室内に残る原因となります。

大切なのは、設備の年数だけで決めつけず、故障原因・契約内容・使用状況・点検結果を確認することです。換気扇や給湯器、エアコンなどの住宅設備は、故障してから対応するよりも、計画的に点検・交換することで、入居者満足と賃貸住宅の価値向上につながります。

よくある質問(Q&A)

Q
20年以上経過した換気扇が壊れた場合、入居者へ請求できますか?
A

20年以上経過した換気扇が壊れた場合、入居者に修理費用を請求できますか?

通常使用による経年劣化が原因であれば、原則としてオーナー負担です。

一方、入居者の故意・過失などが原因の場合には、契約内容や故障状況に応じて費用負担が生じる可能性があります。

Q
換気扇の油汚れは、すべて入居者負担ですか?
A

いいえ。通常の生活で生じる程度の油汚れまで、すべて入居者負担になるわけではありません。

清掃を怠ったことで著しい汚れが生じている場合などは、状況に応じて清掃費用の負担を検討します。

Q
換気扇の耐用年数が過ぎていたら、入居者は一切費用を負担しなくてよいのですか?
A

必ずしもそうではありません。

設備の経過年数は交換費用の負担を判断する重要な要素ですが、清掃費用や故意・過失による損傷などについては、別途検討が必要となる場合があります。

Q
入居者が自分で修理業者を手配してもよいですか?
A

まずは管理会社やオーナーへ連絡することが基本です。

ただし、民法第607条の2では、貸主に修繕の必要を通知しても相当期間内に修繕されない場合や、急迫の事情がある場合などに、入居者自身が修繕できることが定められています。

事後の費用負担でトラブルにならないよう、連絡・相談の記録を残すことが大切です。

Q
退去時に換気扇が故障していた場合はどうすればよいですか?
A

最初に故障原因と設備の使用年数を確認します。

入居者の責任による損傷が疑われる場合には、写真や点検結果、契約内容などを確認したうえで、合理的な費用負担を検討します。