本年の2024年は元日に能登半島地震が発生して多くの命が失われ、つらい幕開けとなりました。私たちは大規模災害がいつでもどこでも起こり得ることを思い知らされ、いま「防災」への関心が社会全体で高まっています。

そんななか、(公財)日本賃貸住宅管理協会(通称:日管協)東京都支部が昨年10月に発行した実用書『防災マニュアル~「過去の大震災に向き合った」賃貸住宅管理業者の情報と行動』(以下「本書」)が注目を集めています。

イチイグループ代表の荻野が当支部の副支部長として本書の作成を提案し、取りまとめたもの。災害発生前の事前準備から発生直後、その後の復興期に至るまで、それぞれの時期に管理会社が行うべきことを詳細に示しています。

被災物件の家賃減額や盗難防止等の難題に取り組む

このたびの能登半島地震に当たっては、日管協本部が発生の直後、この防災マニュアルを被災地の同協会・石川県支部に送付しました。現在、支部会員の管理会社は本書を活用しながら現場の対応に追われているところです。

これを踏まえ当サイトでは、同マニュアルの内容(一部)についてお伝えしたいと思います。

➊安否確認と避難誘導〈災害時〉

【管理会社の体験記】

「建物が半壊したが、契約を終了させるにも入居者の避難先が分からず、避難所を数ヵ所回ったが結局発見できず。市役所に問い合わせても個人情報だからと教えてもらえず、課題が残りました」

「全壊か半壊かを認定する市の調査が遅く、被災した入居者との交渉が遅れてしまい、こちらの対応の遅さを非難されました」

「エレベーターに閉じ込められた人がいたが、救出方法の知識がなかった」

「施工会社には耐震補強と修繕を優先的に実施してもらったため、一時的に避難した入居者も後日戻ることができました」

➋家賃減額要請への対応〈災害から1週間〉

被災した管理物件においては家賃減額要請への対応や入居者の安全確保、盗難防止対策、金融決済の体制づくりを行います。

【管理会社の体験記】

「家賃の免除や減額の要望だけでなく、さまざまな要求に対応するのが難しかった」 

「家賃の減額はほぼ要求どおりの対応をしました」

➌被災者支援制度の情報提供〈災害から2週間〉

大規模災害で適用される公的な支援制度や補助金などの情報を平時から集め、被災した入居者や家主が生活の再建に動き出すとき、適切に情報提供できるようにします(たとえば行政が罹災証明書を発行する判断基準、地震保険の支払い基準など)。

日頃の蓄えや備えに取り組む

今回の能登半島地震に遭遇した管理会社㈱イチイの滝澤圭一郎次長はこう話しています。

『実家の長野県に帰省していた元日は、けたたましいサイレン音と激しい揺れにびっくりしました。もし同程度の地震が東京で起こった場合・・ということをずっと考えながら正月を過ごしました。

大地震が発生した時は、まず家主様や入居者様からの依頼に対応する社員自体が出勤できず、壊れた設備もすぐには直せない可能性が高いと思います。したがって、日頃から蓄えや備えをしっかり行わなければと感じました。

社員はもちろん、入居者様にもよくアナウンスをし、「まず、自分の身は自分で守る」ということを伝えていきたいと思います』 

発生前から復興期まで対応策示す

本書の全体構成については次の通りです。

【本書の構成】
第1部 事前の準備 
第2部 災害発生直後 
第3部 災害発生から1週間 
第4部 災害発生から2週間 
第5部 災害発生から1カ年
第6部 復興期に向けて

特に重要な「災害発生直後」の局面では管理会社に次の対応を求めています。

〈第2部 災害発生直後〉
⑴大規模震災発生後の避難 
⑵従業員の安否確認 
⑶店舗事務所内の被害確認 
⑷社内体制の整備と対応方針の決定 
⑸クレームの電話応対と対処方法 
⑹交通・通信手段の確保と対応策 
⑺入居者・家主の安否確認 
⑻管理物件の被害状況の確認